第6章:災害対応の基本
災害対応の共通言語

「命と健康」を守るためには、個人の努力だけでなく、組織や専門職の連携が欠かせません。ここで紹介する用語や枠組みを、すべて覚える必要はありません。
災害時に「今、何が一番大事か」を整理し、他職種と共有するための“共通の地図”として使うことが目的です。ここでは、CSCATTTを中心に、災害医療で広く採用されている、CSCAPPP(災害薬事対応)、CSCAHHH(ヘルスケア)について解説していきます。Command & Control (指揮・統制)、Safety (安全)、Communication (通信・連絡)、Assessment (アセスメント・状況評価)、Triage (トリアージ)、Treatment (治療)、Transport (搬送)の頭文字をとり表しています。

1. 共通部分であるCSCAについて

1.1. Command & Control (指揮・連携):

指揮系統は縦のつながりを表します。活動組織体の指揮系統を確立し、誰がリーダー(指揮官)で、どのような責任分担があるかを明確にし、役割分担を行っていきます。

連携は、その支援活動体の中における横のつながり、連携を表します。どのような特徴を持った組織やチームが活動しているのか、どのような連携をとることができるのかということを表すことができます。対応組織体やチーム内においても組織図などを提示することで理解しやすくなります。

1.2. Safety (安全):

現場および周辺環境の安全性、ハザードを確認し、支援チームや傷病者の二次被害を防ぎます。

予測されるハザードなどに対し事前に対応策や対応方法、装備などを準備することで、危険の閾値を下げることができます。また、身体的な危険だけでなく、精神的な安全確保も必要になります。支援チームが安全に活動できなければ、傷病者や被災者に対応することはできません。安全確保はすべての活動の最優先事項です。

1.3. Communication (通信・連絡):

災害時には、情報の伝達が活動自体の生命線になります。誰とどうやって、どのような内容を連絡取るのかを確認する必要があります。

情報伝達先:現場と外部(行政機関、調整本部、病院、施設、避難所、他の緊急サービス)との間の確実な連絡手段を確保し、情報共有を確立します。伝達手段が何か、災害時でも使用可能な通信手段(例:無線チャンネル、衛星電話、携帯電話、Star Linkなど)、連絡頻度、連絡窓口(リエゾン)を明確にします。情報伝達内容、広域災害救急医療情報システム(EMIS)、D24H、J-SPEED、SIP4Dなどのアプリの使用や、情報伝達の雛形を用い、確実な内容の伝達と、復唱による確認などを行う必要があります。

1.4. Assessment (アセスメント・状況評価):

災害時に情報収集し評価を行うことは、活動の目的によって異なります。

被災地内で最低限評価するべき項目として、災害の種類、被災状況、起こった正確な場所・座標、災害の性質、活動における危険性の情報、周辺の道路状況、到達経路、進入経路、負傷者数、重症度、避難者数、緊急対応機関の現状と今後必要となる機関などがあります。
例えば、避難所で高齢者の体調不良が増えている一方、医療チームには外傷患者の情報しか届いていない場合、 CSCAの視点で情報を整理し共有することで、保健・福祉チームが早期に介入できるようになります。

避難所で混乱が生じたとき、支援が重なったとき、判断に迷ったときに、この共通言語が役立ちます。