第7章:社会的支援
精神保健および心理社会的支援(MHPSS、PFA)

災害は建物、被災者の身体だけでなく、目に見えにくい「心」にも大きな衝撃を与えます。これをケアする仕組みを知っておくことは、自分や身近な人を守るために非常に重要です。

1. MHPSS(心理社会的支援)とは?

MHPSSとは、災害によって傷ついた人々の心理的な健康と、社会的なつながりを支える活動の総称です。

特徴は、専門家による治療だけでなく、「日常を取り戻すことすべて」を支援と捉える点にあります。支援の形は以下の4層(ピラミッド構造)で考えられます。

  • 第1層(基本サービス): 食べ物や安全な寝床の確保(安心、安全が心の安定の土台です)。個々の被災者の方の尊厳を保つことができるような対応。
  • 第2層(家族・地域の支援): 避難所での声掛けや、子どもが遊べる場所作り。地域のコミュニティー支援。
  • 第3層(非専門家による支援): 相談員、こころのケアチームなどによる個別のサポート。
  • 第4層(専門的支援): 精神科医、臨床心理士などによる専門的な対応。

2. PFA(心理的応急処置)とは?

PFAは、ショックを受けた直後の人に対し、専門家でなくてもできる「こころの応急手当」です。カウンセリングのように深く話を聞き出すのではなく、相手が落ち着きを取り戻せるよう寄り添います。

PFAには、基本となる3つのアクションがあります。

⓪準備する (Prepare)

支援を始める前に、まずは自分自身と現場の状況を整えます。

  • 状況を知る: どんな災害が起き、今どんなサービス(行政支援、炊き出し、医療など)が利用可能かを確認します。
  • 安全を確認する: 支援場所が物理的に安全か、自分自身が冷静でいられる状態かを確認します。

① 見る (Look)

  • 安全の確認: その場が安全か、深刻な反応(パニックなど)をしている人はいないかを確認します。
  • ニーズの把握: 基本的な助け(水、毛布など)を必要としている人を探します。

② 聴く (Listen)

  • 話に耳を傾ける: 無理に話を聞き出すのではなく、相手が話したいことを否定せず、静かに聴きます。
  • 安心を伝える: 相手の気持ちに共感し、落ち着けるようにサポートします。

③ つなぐ (Link)

3. 子どもたちの「遊び」と「教育」の場

被災した子どもたちにとって、「遊び」は単なる娯楽ではなく、心の健康を取り戻すための「仕事」であり大切な営みであり、回復を支える力です。

  • MHPSS(心理社会的支援)としての遊び: 災害直後の不安定な環境下で、子どもが安心して遊べる場所(チャイルド・フレンドリー・スペース)を確保することは、日常性を取り戻すための重要な支援です。
  • 教育の継続: 学校の再開は、子どもに「予測可能な日常」を提供します。これは、PFAの「つなぐ(Link)」の一環でもあり、家族以外との社会的な繋がりを再建するプロセスです。大人が支援や片付けに集中できるよう、子どもが安全に過ごせる場を作ることは、家族全体のレジリエンス(回復力)を高めます。

4. 「準備・見る・聴く・つなぐ」のサイクルは、先述したCSCATTTの「A(評価)」や、CHSの「説明責任(相手のニーズを第一にする)」と深く結びついています。

まとめ

PFAは「教える」ことではなく「寄り添う」ことです。相手を自分の判断でコントロールしようとするのではなく、相手が自分の尊厳を保ちながら、少しずつ落ち着きを取り戻し、自立を手助けをすることがゴールです。

支援をする側が疲れ切ってしまっては、支援は続きません。自分自身の休息やサポートを確保することも、大切な支援の一部です。