第7章:社会的支援
支援者支援

支援が長期化する中で、誰もが「支援の主体」であり「ケアの対象」になり得るという共通認識が、地域の復興を早めます。災害対応の持続可能性を左右する最重要課題である「支援者支援」について説明します。ここでいう「支援者」には、医療・福祉の専門職だけでなく、行政職員、施設職員、地域で支援に関わる人も含まれます。
1. 支援者支援が必要な理由:二次的受傷の防止
支援者は、悲惨な現場を目の当たりにしたり、被災者の悲嘆に触れ続けたりすることで、自分自身もトラウマを負う「二次的受傷」や、心身が燃え尽きる「バーンアウト」のリスクに常に晒されています。 支援者が倒れることは、支援活動そのものの停止を意味します。そのため、支援者支援は「思いやり」ではなく、活動を継続するための「戦略的な安全管理」なのです。
2. 産業保健の視点による組織的アプローチ
産業保健の考え方を導入し、CSCATTTの「S(Safety:安全)」を「労働安全衛生」として具体化することが求められます。
- 作業環境管理: 支援者が被災者と同じ雑魚寝をするのではなく、遮音・遮光された「休養専用スペース」を確保し、質の高い睡眠と栄養を組織として提供します。
- 作業管理: 24時間対応を美徳とせず、強制的な交代勤務制(シフト管理)を導入します。現場の熱意による「自己犠牲」を、リーダーが制度として抑制する勇気が必要です。
- 健康管理: 活動前後および活動中の定期的な健康チェックを実施します。産業医や保健師が現場を巡回し、顔色や言動の変化から早期のストレスサインをキャッチします。
3. PFAの原則を用いた相互支援(準備・見る・聴く・つなぐ)
支援チーム内でも、PFA(心理的応急処置)の行動指針を「仲間同士」で活用します。
- 準備(Prepare): 事前に災害ストレスの知識を学び、自分のストレスサイン(イライラ、不眠、食欲減退など)を知っておきます。
- 見る(Look): 同僚の様子を観察します。「口数が急に減った」「ミスが増えた」「不自然にハイテンション」などの変化を見逃さないようにします。
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聴く(Listen):
活動後の「デブリーフィング(振り返り)」の場を作ります。批判や評価をせず、その日に感じた困難や感情を吐き出せる安全な場を確保します。
※ここでいうデブリーフィングとは、 心理療法ではなく、業務と体調を確認するための非強制的な振り返りを指します。 - つなぐ(Link): 重度のストレス反応が見られる場合は、本人の意思にかかわらず、専門のカウンセラーや産業医によるケアへ迅速に繋ぎます。
4. CHS(説明責任)としてのスタッフケア
CHS(人道支援の核心基準)の「第9基準」には、スタッフが効果的に仕事を遂行できるようサポートを受ける権利が示されています。支援組織がスタッフの心身の安全を守ることは、被災者に対して「質の高い、安定した支援」を提供し続けるための責任の一つです。
まとめ:支援のバトンを繋ぐために
支援者支援の本質は、個人の努力に頼るのではなく、「組織として休ませる仕組み」「組織としてケアする仕組み」を持つことにあります。 産業保健の視点を取り入れ、管理(CSCATTT)と質(CHS)の両面からスタッフを守ること。それが結果として、被災された方々の尊厳を守ることにも直結します。
支援団体や自治体が「スタッフの燃え尽き」を防ぐために導入すべき「具体的な交代勤務ルールのやり方」について考えてみませんか?
