第8章:災害時の組織的対応について
保健・介護・福祉、在宅などでの対応

私たちの生活を支える保健・介護・福祉、そして在宅での災害対応について解説します。医療が「命を救う」ものなら、保健・介護・福祉、そして在宅、これらは避難生活での「生活不活発病」や「孤独死」、そして「災害関連死」を防ぎ、地域の生活と命をつなぎ留めるために必要な分野です。
医療が「命を救う」役割を担うのに対し、保健・介護・福祉・在宅支援は、命を守り続けるために同時に必要な支援です。
1. 保健・衛生の対応:集団の健康を守る
保健の専門チーム(DHEATなど)は、被災地域全体の環境を調整します。
- 感染症と衛生の管理: 食中毒、インフルエンザ、ノロウイルスなどの蔓延を防ぎます。「トイレの清掃指導」や「手洗い場の設置」は地味に見えますが、命を守る最優先事項です。
- 健康のスクリーニング: 避難所を回り、「顔色が悪い人はいないか」「足がむくんでいる人(エコノミークラス症候群の予兆)はいないか」を個別に確認し、早期発見に努めます。
2. 介護・福祉の対応:弱者を「孤立」させない
高齢者や障害者など、一般の避難所生活が困難な方を支えるのがDCAT ・DWAT(災害派遣福祉チーム)です。
介護・福祉の支援は、専門チームだけで完結するものではありません。 日頃から地域を知る住民や施設職員、関係者からの気づきや情報が、支援の起点になります。
- 福祉避難所の運営: バリアフリーや専門の介助が必要な人のために、特別な設備を備えた施設へつなぎます。
- 生活機能の維持: 慣れない環境で寝たきりになると、数日で歩けなくなる「廃用症候群」が進みます。理学療法士などと連携し、避難所内での軽い運動(リハビリ)を促します。
3. 在宅被災者への対応:見えない被災者を探す
避難所に行かず、自宅で過ごす「在宅被災者」への支援は、現代の大きな課題です。
在宅被災者は、「避難しなかった人」ではなく、 さまざまな事情で避難所に行けない、見えにくい被災者です。 支援が届きにくいからこそ、早期の把握と声かけが重要になります。
- 戸別訪問(アウトリーチ): 行政や保健・福祉チームが自宅を訪問し、食料の有無や健康状態を確認します。
- 福祉サービスの継続: 普段から利用している「訪問介護」や「デイサービス」が早期に再開できるよう、事業所同士がエリアを越えて応援し合うことが必要です。
4. 地域住民の備え:自助・共助の具体策
行政の支援(公助)が届くまでの間、そこにつなぐまでの間、私たちには以下の対応が求められます。
- 「互助」のネットワーク: 近所に一人暮らしの高齢者がいないか、持病がある人はいないか、普段から挨拶を交わし「いざという時に声をかける人」を決めておきます。
- 福祉用具・介護用品の備蓄: 大人用おむつ、口腔ケア用ウェットティッシュ、とろみ剤、予備の補聴器用電池などは、行政の物資到着が遅れがちです。最低1週間分は備蓄しましょう。
5. 共通言語(CHS・CSCATTT)で質を担保する
- CHS(説明責任): 介護や福祉の現場では「本人の意思(尊厳)」が置き去りにされがちです。「やってあげる」のではなく、本人がどうしたいかの意思決定のプロセス、プライバシーが守られているかを常に問い直します。
- CSCATTT(安全と評価): 特に在宅支援では、スタッフの「安全(S)」を確保した上で、どの家に支援が必要かを正しく「評価(A)」し、優先順位を決めて巡回します。
まとめ
保健・福祉の支援は、災害という非日常の中で「日常のケア」をいかに継続するかの戦いです。私たちが自助・共助で地域の状況を把握しておくことが、プロの支援チーム(公助)の力を最大限に引き出す鍵となります。
