第6章:災害対応の基本
災害対応する活動チーム例

災害発生時には様々なチームが活動します。行政、医療、保健、介護、福祉、生活の基盤を守るチームがあります。それらの代表的なチームの紹介と、役割を説明します。専門職だけで完結するものではなく、地域の関係者や施設職員からの情報提供や連携によって、はじめて機能します。
1. 医療チーム(命を救う・つなぐ)
災害直後の「救命」から、避難生活中の「持病の悪化防止」までを担います。また、避難所で高齢者の体調不良が増えてきた場合、医療チームだけでなく、保健師や福祉チームと情報を共有しながら対応が進められます。
- DMAT:災害急性期に活動する機動部隊。重症者の救急治療や広域搬送を担当。
- JMAT:日本医師会によるチーム。急性期を過ぎた後の避難所巡回や、地元のクリニックの再開支援など、中長期的な医療を支えます。
- DPAT:精神科医療チーム。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の予防や、精神疾患を持つ方への支援を行います。
- 災害支援ナース:各都道府県の看護協会が独自に登録・運用していましたが、現在は国(厚生労働省)の制度として定義され、より迅速で広域的な活動が可能になりました。再被災地や新興感染症の流行地に派遣され、地域住民の健康維持と、現地の看護職の負担軽減を行う「看護の専門チーム」です。
- 災害支援薬剤師:災害支援薬剤師は、混乱する現場で医薬品のロジスティクス(物流)と薬学的なケアを担う専門家です。都道府県の薬剤師会や病院薬剤師会、職域団体に登録され、災害時に被災地へ派遣される薬剤師のことです。お薬手帳の活用と鑑別: スマホ(マイナポータル)や紙のお薬手帳、あるいは現物(薬の殻)から、被災者が普段飲んでいる薬を特定(鑑別)します。避難所の公衆衛生・環境改善: 薬剤師は「学校薬剤師」としての知見もあり、避難所のトイレの衛生管理、感染症対策(防疫)、水質検査なども担当します。一般用医薬品(OTC薬)の相談: 病院に行くほどではないが体調が悪い被災者に対し、備蓄されている薬の適切な使用法をアドバイスします。
- 災害医療コーディネーター:災害時に保健・医療・福祉・介護のすべてのリソースを束ねる「指揮官の右腕」とも言える役割が災害医療コーディネーターです。大規模災害では、全国からDMATや災害支援ナース、薬剤師、ボランティアなど、膨大な「支援」が押し寄せます。しかし、それらがバラバラに動くと、「支援の不均衡」が起こります。これを防ぎ、最適化するのがコーディネーターの役割です。
- 災害薬事コーディネーター:災害薬事コーディネーターは「医薬品の流通・供給・薬学的管理」「環境衛生・公衆衛生」のすべてを統合的にマネジメントする専門家です。災害医療コーディネーターを補佐し地域の薬事衛生管理体制を確立します。また、モバイルファーマシー(災害用医薬品供給車両)の運用検討します。
2. 保健チーム(命を守る環境を整える)
個人の治療ではなく、避難所全体の「衛生管理」や「病気の予防」という集団の健康を守ります。
- DHEAT:保健所を支援する専門チーム。避難所の衛生状態(トイレ・食事・換気)をチェックし、食中毒や感染症の蔓延を防ぐための司令塔になります。
- 保健師チーム:一軒一軒、あるいは避難所の各ブースを回り、健康相談に乗ります。まだ表面化していないリスク(脱水症状、孤独死など)を早期に見つけ出す「地域の見守り役」です。
3. 福祉チーム(弱者を守り、日常を支える)
高齢者、障害者、子どもなど、避難生活で特に困難を抱える方々を支えます。
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DCAT / DWAT:災害派遣福祉チーム。介護福祉士や社会福祉士などで構成されます。
- 一般の避難所では過ごしにくい方のケアを行い、必要に応じて「福祉避難所」への移動をサポートします。
- 「関連死」を防ぐため、ベッドから起き上がれなくなる(廃用症候群)のを防ぐ関わりも重要です。
4. 行政チーム(復興の土台を作る)
被災した市役所や町役場の機能が麻痺しないよう、事務作業やインフラの復旧を支援します。
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対口支援(たいこうしえん):特定の自治体が別の自治体を一対一で丸ごと支援する仕組みです。
- り災証明書の発行、避難所の管理運営、支援金の給付事務など、法的な生活再建に不可欠な「事務作業」を代行・サポートします。
- TEC-FORCE(テックフォース):国土交通省の技術部隊。道路の復旧や河川の点検など、物理的なインフラをいち早く直します。
5. 各チームの連携:被災者を支える
各チームが円滑に連携するためには、第6章-1で紹介した共通言語を用いた情報共有が重要になります。
まとめ
これらのチームはバラバラに動くのではなく、「保健医療福祉調整会議」などの場で情報を共有し支援の役割分担や、連携・調整をします。このように、複数のチームが連携することで、被災された方を「取りこぼさない」効果的な支援が可能になります。
