第12章:情報管理
情報サービス

災害支援の現場では、「人・物・金・情報」という限られたリソースを、いかに最適に配分するかが成否を分けます。特に支援者側にとっては、現場のニーズを把握する「受援」の視点と、提供できる能力を提示する「支援」の視点の両方が不可欠です。保健、医療、福祉、介護、避難所管理の各担当者が活用すべき情報サービスとプラットフォームを、支援者の視点で説明します。
1. 災害支援者のための情報サービス・プラットフォーム一覧
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内閣府「防災情報のページ」:
災害救助法の適用状況や、被災者が利用できる「支援制度の手引き」が即座にアップロードされます。デマに惑わされないための「一次情報源」です。 -
気象庁「キキクル(危険度分布)」:
土砂災害、浸水害、洪水のリスクを5段階の色分けでリアルタイム表示します。避難のタイミングを判断するための、国が提供する最も重要な指標の一つです。 -
り災証明書のデジタル申請:
内閣府が推進する「ぴったりサービス」などを通じ、スマホから罹災証明書の申請が可能になりつつあります。これにより、役所の窓口に並ぶ負担を軽減し、前述した「被災者生活再建支援金」の受給を早めることができます。 -
情報のユニバーサルデザイン:
多言語対応や、視覚障害者向けの読み上げ機能など、国が提供するサービスには「誰一人取り残さない」ための配慮が盛り込まれています。デジタルツールは有効な手段ですが、使えないことが支援を受けられない理由にはなりません。
情報を代わりに確認し、分かりやすく伝えることも、重要な支援の一つです。
2. 支援者(保健・医療・福祉・介護)が活用すべき専門情報
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EMIS(広域災害救急医療情報システム):
災害拠点病院のスタッフだけでなく、地域の保健師も「近隣病院の状況」「避難所の状況」「救護班の活動状況」などを知るために重要です。 -
D24H:
主に避難所のアセスメントを可視化するツールになります。
避難所全体の統計だけでなく、個別の「要配慮者」の存在を早期に見つけることができます。 -
J-SPEED:
J-SPEEDは、災害時の避難所や救護所における診療患者の動向を、リアルタイムに可視化するシステムです。 -
自治体「避難行動要支援者名簿」:
(オンラインサービスではありませんが)福祉・介護職が「誰を優先的に訪問(アウトリーチ)すべきか」を判断する最重要ツールです。 -
アレルギーポータル:
アレルギー疾患(ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギーなど)について、信頼できる情報を一元化しています。
情報は集めるだけでは意味を持ちません。
共有し、解釈し、次の行動につなげて初めて支援に生かされます。
3. 被災者自身が活用できる生活再建・健康情報
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マイナポータル(医療情報閲覧):
お薬手帳を紛失しても、過去の処方履歴や特定健診結果を確認できるため、救護所でのスムーズな診察に繋がります。 -
各自治体の公式LINE・SNSや防災情報ページ:
給水車の場所、炊き出しの時間、り災証明書の発行窓口など、「生活支援」に直結する情報はSNSが最も速い場合があります。 -
NHK防災アプリ:
地域の気象警報に加え、避難情報、災害関連ニュースが広告なしで確実に得られます。
4. 支援の質を担保する情報活用
正確な情報を伝えるだけでなく、被災者からの声や困りごとを受け止め、支援側に戻すことが、情報管理の重要な役割です。
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情報の透明性:
支援者は「いつ、どこで、何がもらえるか」という確実な情報を被災者に伝える義務があります。デマや不確定な情報を流さないよう、公式ソース(自治体・公的機関)を確認する癖をつけましょう。 -
双方向の通信:
被災者からの苦情やニーズ(例:おむつのサイズが足りない、特定の薬が必要など)を、システムを通じて支援側へ吸い上げる仕組みが、支援の質を向上させます。
まとめ
情報の「備蓄」も忘れずに
- 災害が起きてからアプリをダウンロードしたり、使い方を調べたりするのは困難です。平時から防災アプリのブックマーク・インストールを行う必要があります。
- 災害用伝言ダイヤル(171)の体験利用
- マイナンバーカードと健康保険証の紐付け確認
- これらを事前に済ませておくことが、災害時の「情報格差」をなくし、自分と周囲の命を守る力になります。
- デジタルツールの「相互運用性」:国(内閣府・厚労省)が推進しているのは、これらのバラバラなシステムをSIP4Dなどの基盤で「つなぐ」ことです。 保健、医療、福祉の支援者が、それぞれの専門システムの情報を共有し合うことで、連鎖的な課題を早期に発見し、対策を打つことが可能になります。
